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税制改正

総数9件 1 2

皆さん、明けましておめでとうございます。
公認会計士・税理士檜垣孝司です。
本日より、平成30年税制改正に関連した解説を順次掲載してまいります。
まず最初は、「特定の一般社団法人等に対する相続税の課税」についてお伝えしたいと思います。

(1)一般社団法人とは
いきなりこのタイトルを見せられても、まず、「一般社団法人て何だ・・・?」という方もいらっしゃるかと思うので、少しだけ、一般社団法人のお話をしたいと思います。
一般社団法人を一言でいうと、「持分のない株式会社」です。これでもまだ全然わからないと思うので、「持分がない」をもう少し掘り下げたいと思います。

(2)持分がないとは
通常、株式会社の貸借対照表の純資産には「資本金」という項目があり、この資本金に対応する株式が発行されています。株式会社では、各株主が持ち株割合に応じて株式会社の資産・負債(すなわち純資産)に対する支配権を持っており、これを一般に持分と呼んでいます。一般社団法人には、「資本金」がなく、その当然の帰結として、株式もありません。そうなると当然、「持分もない」ということになります。そのため、一般社団法人では、株式会社のように、たくさん株を持っている人が大きな支配権を持つということはなく、株主総会に相当する「社員総会」という会議体においても、一人当たり一議決権を持つことになり、単純な多数決で物事を決めていきます。

(3)一般社団法人は非営利事業しかできないのでは・・・?
株式会社というと、普通の営利目的の事業をやっているイメージを誰でも抱くでしょう。しかし、一般社団法人というと、「営利事業はできない」とか、「利益を出しちゃいけないんでしょ?」という方がいらっしゃいます。そんなことはありません。一般社団法人には事業内容の制限も、所得制限もありません。株式会社でやっているような事業を一般社団法人で行うことも、何ら違法性はないのです。

(4)持分がないとどういう利点があるのか
持分、つまり株式と言い換えてもいいでしょう。株式がないと何がいいのかというと、相続税対策において無類の強さを発揮します。通常、株式会社であれば、株式があり、事業がうまくいって内部留保が大きければ大きいほど、非上場株式であっても相当の株価が付きます。そして、その株式は当然株主に相続が発生した際には、相続財産を構成するのです。しかし、一般社団法人には、株式がない。確かに、株主に相当する「社員」という人たちはいるものの、株式という財産はなく、社員としての地位も一身専属。つまり、社員の地位は相続対象ではありません。そうなると、一般社団法人にどれほどの内部留保があろうとも、社員死亡時に「株式に相続税がかかる」ということはないのです。この特徴をうまく利用すると、特定の一族が代々一般社団法人の代表を務め続けた場合、事実上、その法人の財産を相続で受け継いでいるにもかかわらず、その財産を入れた器が一般社団法人であれば一切相続税がかからないという状況が発生します。もしも、株式会社であれば、相当高額な相続税が株式にかかるような場合であっても、一般社団法人を使うと、衝撃的な相続税の節税効果があるのです。

(5)平成30年税制改正の概要今回の改正の概要は次の通りです。
『特定一般社団法人(※1)の役員(理事に限る)(※2)である者が死亡した場合には、当該特定一般社団法人が、当該特定一般社団法人の純資産をその死亡時における同族役員(※3)(被相続人含む)の数で除して計算した金額に相当する金額を当該被相続人から遺贈により取得したものとみなして、当該特定一般社団法人に相続税を課税する。』
(※1)特定一般社団法人
次に掲げる要件のいずれかを満たす一般社団法人をいう。
@相続開始の直前における同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超えること
A相続開始前5年以内において、同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であること
(※2)相続開始前5年以内のいずれかの時において特定一般社団法人の役員であった者を含む
(※3)同族役員とは
一般社団法人の理事のうち、被相続人、その配偶者又は3親等以内の親族その他当該被相続人と特殊の関係がある者(被相続人が会社役員となっている会社の従業員等)をいう。

(6)適用開始はいつからか
当該改正は平成30年4月1日以後の一般社団法人の役員の死亡に係る相続税について適用されます。但し、その前に設立された一般社団法人については平成33年4月1日以後の役員の死亡に係る相続税について適用し、平成30年3月31日以前の期間は上記(※1)Aの2分の1を超える期間に該当しないものとされています。

当会計事務所では、先週公表された平成30年税制改正大綱の解説を行ってまいります。今週は、まずはダイジェストで全体のだいたいの感じをお伝えします。当然、この後、各テーマごとに内容を深めて参ります。

【事業承継税制の特例の創設】
1.制度の概要
先代から贈与又は相続もしくは遺贈により取得した、すべての非上場株式に係る課税価格に対応する贈与税又は相続税の全額について、後継者の死亡の日まで納税を猶予する。
2.後継者の要件の概要
代表権を持った後継者(同族関係者で過半数の議決権を持っている場合に限る)であって、同族関係者中で最大株主であること。
3.対象法人の要件
特例承継計画を都道府県に提出し、認定を受けた会社。特例承認計画の作成には認定経営革新等支援機関の関与が必要。
4.従来の事業承継税制の不安なポイントへの対応
 @雇用確保要件を満たせないとアウトなのか?
当該要件を満たせなかったことについて認定経営革新等支援機関の意見が書かれた理由書を提出すればOK。
 AM&Aや解散をしたらアウトなのか?
経営状態が悪い場合に、M&Aや解散をした場合に相当の税額を免除してくれる救済措置あり。
5.適用期間
平成30年1月1日から平成39年12月31日まで

【一般社団法人に関する課税強化】
1.制度の概要
特定の一般社団法人の役員が死亡した場合に一定の金額を当該一般社団法人が遺贈により取得したものとみなして、当該一般社団法人に対して相続税を課税する。
2.特定の一般社団法人とは
次のいずれかの一般社団法人
@役員の1/2超が同族関係者で占められている法人
A相続開始前5年以内に同族関係者が1/2超の役員を構成していた期間の合計が3年以上ある。
3.適用開始時期
平成30年4月1日以後

【小規模宅地等課税価格特例の縮減】
1.特定居住用宅地等の特例の縮減
持ち家に居住していない者に係る対象者の範囲から下記を除外。
@相続開始前3年以内に、その者の3親等内親族が所有する家屋に居住したことがある者
A相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者
2.貸付事業用宅地等の特例の縮減
相続開始前3年以内に貸し付け事業のように供された宅地を除外。
3.適用開始時期
平成30年4月1日以後の相続又は遺贈から

【給与所得控除額の改正】
1.改正の概要
@控除額を一律10万円引き下げる。
A給与所得控除の上限額が適用される給与等の収入金額を850万円、その上限額を195万円に引き下げる。
2.改正後の給与所得控除額
改正後の給与所得控除額

【公的年金等控除額の改正】
1.公的年金等に係る雑所得以外の所得が1,000万円以下である場合の公的年金等控除額。
 {(イ)+(ロ)}と(ハ)のいずれか大きい額。
(イ) 定額控除 40万円
(ロ) 定率控除
(50万円控除後の公的年金等の収入額)
360万円以下の部分        25%
360万円超720万円以下の部分 15%
720万円超950万円以下の部分 5%
(ハ) 最低保障額
     65歳未満   60万円
     65歳以上  110万円
2.公的年金等に係る雑所得以外の所得が1,000万円超2,000万円以下である場合の公的年金等控除額。
 {(イ)+(ロ)}と(ハ)のいずれか大きい額。
(イ) 定額控除    30万円
(ロ) 定率控除 
    (50万円控除後の公的年金等の収入金額)
    360万円以下の部分        25%
    360万円超720万円以下の部分 15%
    720万円超959万円以下の部分 5%
(ハ) 最低保障額
    65歳未満   50万円
    65歳以上  100万円
3.公的年金等に係る雑所得以外の所得が1,000万円超2,000万円以下である場合の公的年金等控除額。
 {(イ)+(ロ)}と(ハ)のいずれか大きい額。
(イ) 定額控除    20万円
(ロ) 定率控除
    (50万円控除後の公的年金等の収入金額)
    360万円以下の部分        25%
    360万円超720万円以下の部分 15%
    720万円超950万円以下の部分 5%
(ハ) 最低保障額
    65歳未満     40万円
    65歳以上     90万円

【基礎控除の改正】
改正後の基礎控除の金額
@合計所得金額が2,400万円以下
  ・・・48万円
A合計所得金額が2,400万円超2,450万円以下
  ・・・32万円
B合計所得金額が2,450万円超2,500万円以下
  ・・・16万円
C2,500万円超
  ・・・基礎控除の適用なし。

【青色申告特別控除の改正】
1.電子帳簿保存、E-taxを利用していない青色申告者(所得税)
取引を正規の簿記の原則に従って記録している者に係る青色申告特別控除を55万円とする。
2.その他の青色申告者(所得税)
次のいずれかの要件を満たすものの青色申告特別控除を65万円とする。
@仕訳帳及び総勘定元帳の保存について電子帳簿保存制度を利用する。
A確定申告書、貸借対照表及び損益計算書をE-taxで申告する。
適用開始時期について
給与所得控除額の改正、公的年金等控除額の改正、基礎控除の改正、青色申告特別控除の改正は平成32年分以後の所得税について適用されます。

【所得拡大促進税制の拡充(中小企業者以外)】
1.概要
次のいずれも満たす場合には、給与等支給増加額の15%の税額控除ができる。この場合に、教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が20%以上であるときは、給与等支給増加額の20%の税額控除ができるものとする。但し、控除税額は当期の法人税額の20%を上限とする。
@平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した金額の比較平均給与等支給額に対する割合が3%以上であること。
A国内設備投資額が減価償却費の総額の90%以上であること。
2.適用期間
平成30年4月1日から平成33年3月31日まで。

【所得拡大促進税制の拡充(中小企業者)】
1.概要
平均給与等支給額の前年からの増加割合が1.5%以上である場合、給与等支給増加額の15%の税額控除ができる。
この場合において
次の要件を満たすときは、給与等支給増加額の25%の税額控除ができる。但し、控除税額は当期の法人税額の20%を上限とする。
@平均給与支給額の前年からの増加割合が2.5%以上である。
A次のいずれかの要件を満たすこと。
 イ 教育訓練費の額の前年からの増加割合が10%以上である。
 ロ 中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたもので、その経営力向上計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明されたこと。
2.適用期間
平成30年4月1日から平成33年3月31日まで

【償却資産税の軽減措置】
1.軽減のための要件概要
生産性向上の実現のための臨時措置法の制定を前提に、
@市町村の導入促進基本計画に適合すること。
A労働生産性を年平均3%以上向上させること。
を内容として認定を受けた先端設備等導入計画に記載された一定の機械・装置等で、生産、販売活動に直接使われるもの。
2.適用期間
生産性向上の実現のための臨時措置法の施行の日から平成33年3月31日までの間に取得されたもの。
3.現行制度の廃止
現行の、中小企業等経営強化法に規定する認定経営力向上計画に基づく償却資産税の軽減措置は、適用期限をもって廃止する。

中小企業者等については一定以上の賃上げを行った場合には、従来の制度よりもより多くの税額控除を受けられるようになりました。
但し、税額控除を受けるために賃上げを行う企業というのは通常ないでしょうから、このような制度が賃上げのインセンティブとなるかと言われるとはなはだ疑問ではありますが、とりあえず毎年昇給している企業にとっては結果的により多くの税額控除を受けることができるかもしれません。なお、この改正は法人税だけでなく、所得税でも同様の改正が行われます。
(1)もともとの制度の復習
前提条件:青色申告法人(大法人でも適用可能な制度です)
要件1:当事業年度の国内雇用者に対する給与等の支給額(雇用者給与等支給額)が基準年度の国内雇用者に対する給与等の支給額より一定割合以上増加していること。
要件2:当事業年度の雇用者給与等支給額が前事業年度の国内雇用者に対する給与等支給額以上であること。
要件3:当事業年度の平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を超えていること。
以上のすべての要件を満たした場合に、雇用者給与等支給額の10%相当額を法人税額から控除するという制度でした。
(2)改正内容
@中小企業者等の場合
下記の条件を満たした場合には下記の税額を控除します。
要件1及び要件2⇒現行制度と変更なし。
要件3 {(平均給与等支給額)−(比較平均給与等支給額)}/(比較平均給与等支給額)≧2%を満たす
⇒税額控除額
 a:雇用者給与等支給増加額×10%
 b:「雇用者給与等支給増加額」と「雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した残額」のいずれか低い金額×12%
 c:a+b=税額控除額
つまり、新しい要件3を満たした場合には、今までの税額控除に12%を上乗せさせるイメージとなります。
ちなみに、要件1、2は充足しているものの、新しい要件3を満たさない場合には、従来と同様の計算になります。
A中小企業者等以外の場合
要件1、要件2は現行制度と変更ありません。
要件3{(平均給与等支給額)−(比較平均給与等支給額)}/(比較平均給与等支給額)≧2%を満たす
⇒税額控除
 a:雇用者給与等支給額×10%
 b:「雇用者給与等支給額増加額」と「雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した残額」のいずれか低い金額×2%
 c:a+b=税額控除額
中小企業者等以外の法人については、新しい要件3をクリアできなかった場合、所得拡大促進税制の適用自体がなくなりますので注意が必要です。
以上を図式化すると下記のようになります。
所得拡大促進税制改正
(3)適用時期と留意事項
この改正は平成29年4月1日以後開始する事業年度分より適用されます。この税制を適用するために事前の書類提出は不要です。また、業種の制限もないことから、これまで光が当てられてこなかったサービス業でも税額控除を受けるチャンスが与えられていることになります。しかし、この制度を適用するためには特に平均給与等支給額の集計に時間を要することから、申告期限間際に計算すると誤りの原因になります。また、会計事務所によってはこの制度を適用しないところもあるという話も聞かれます。
もし、毎年昇給をさせているのに、御社の顧問税理士から所得拡大促進税制の話をされたことがないという企業様がおられましたら、当会計事務所までお問い合わせください。

生産年齢人口が減少を続け、人手不足を感じる企業が多い中、配偶者控除が適用される103万円以内にパート収入を抑える、いわゆる「103万円の壁」が問題となってきました。
この「103万円の壁」の仕組みは次の通りです。
「基礎控除38万円+給与所得控除額65万円=103万円」
給与収入を103万円以内に抑えることにより、本人が所得税を払わなくてよくなるほか、配偶者の扶養に入ることができることにより、配偶者の所得税も抑えることができるというメリットがあったわけです。
ただ、配偶者特別控除の導入によって、すでに配偶者の給与収入が103万円を超えても世帯の手取り収入が逆転しない仕組みとなっており、制度上は「103万円の壁」は解消されています。
それにもかかわらず収入を抑える傾向が生じる要因として、「103万円」という水準が企業の配偶者手当制度等の支給基準に採用されていることや、「103万円の壁」が心理的な壁として作用していることが指摘されています。そこで、配偶者控除については、改正の議論が始まった秋ごろまでは廃止の方向でしたが、一転して「150万円の壁」へと拡大されることになりました。
(1)配偶者控除の改正
配偶者控除は高額所得者ほど減額される。
(2)配偶者特別控除の改正
配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下(現行:38万円超76万円未満)とされ、控除額が次のとおり改正されます。なお、現行制度と同様、合計所得金額が1,000万円を超える人は配偶者特別控除が適用できません。
配偶者特別控除の改正後の金額
改正により、妻の収入が150万円以下であれば、夫が配偶者控除と同等の所得控除(38万円)を受けることが可能になります。
なお、これらの改正は平成30年分以後の所得税について適用されます。

平成29年税制改正で恐らく最大の改正ポイントの一つになるのがこの「中小企業経営強化税制」であると思われます。これまでの中小企業投資促進税制よりも適用範囲が拡大しているため、これまで中小企業投資促進税制と無縁であった企業にあっても、新たに編成された「中小企業経営強化税制」の適用の可否をよく確認しておく必要があるものと思われます。
この中小企業経営強化税制は従来の中小企業投資促進税制の上乗せ措置を独立の制度として改組したものです。

(1)本税制における中小企業のメリット
  特別償却:即時償却
  又は
  税額控除:7%(特定中小企業者は10%)
  の選択適用

(2)適用要件
@青色申告書を提出する中小企業者等であること。
A生産等設備を構成する機械装置、工具(測定工具及び検査工具のみ)、器具備品、建物付属設備、ソフトウェアで、かつ、「特定経営力向上設備等」に該当するものであること。
※特定経営力向上設備等とは、中小企業等経営強化法で規定される生産性向上設備収益力強化設備であり、かつ、経営力向上に著しく資する一定のもので、その法人の認定を受けた経営力向上計画に記載されたものを言います。
   具体的には↓をご覧ください。        
特定経営力向上設備等
※生産等設備でなければならないため、例えば事務用器具備品、本店、寄宿舎等に係る建物付属設備、福利厚生施設に該当するものは対象外となります。さらに、医療用機器も対象外となります。
B一定の金額規模以上のものを取得すること。
  (上記図表参照のこと)
C国内の指定事業の用に供すること。

(3)適用期間
 平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に事業共用したもの。

(4)留意点
  本制度を適用するにあたっての最大の留意事項は、従来の中小企業投資促進税制と異なり、取得した後、要件の適否を検討するという後付的な検討ができない点です。つまり、あらかじめ、A類型であれば工業会等からの証明書の入手や経営力向上計画の申請・認定を、B類型であれば経産局による投資計画の確認や経営力向上計画の認定を、それぞれ資産の取得に先行して行っておく必要があります。

(5)従来の中小企業投資促進税制の今後の取り扱い
 従来の中小企業投資促進税制については、対象設備から「器具備品」を除外した上で、適用期限を2年間延長(平成31年3月31日まで)することとなっております。

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