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法人税

総数2件 1

この事例は、令和元年6月27日、東京地裁で出された判決です。
この事案では、原告の完全子会社を消滅会社とする適格合併が行われ、その際完全子会社が持っていた青色欠損金を法人税法57条2項の適用により原告の欠損金として申告したところ、法人税法132条の2(組織再編成に係る行為又は計算の否認)の適用による更正処分を受けたものです。

一般的に、5年以上完全子会社として支配していた会社にに存在している青色欠損金は完全親会社がその完全子会社と合併することにより、親会社に引き継ぎ、親会社の利益と相殺することが認められています(法人税法57条2項、3項)。

今回の事件は、5年以上完全子会社として支配していた会社を合併したにもかかわらず、組織再編成に係る行為計算否認(法人税法132条の2)によって完全子法人の青色欠損金の引き継ぎが認められなかった事案です。

その理由は主に次のようなものであります。
@ 完全子会社の青色欠損金の引き継ぎに「5年以上支配していること」という制限を設けている法人税法57条3項について、あくまでも典型的な租税回避行為として予め想定されるものを対象として定めた具体的規定に過ぎず、青色欠損金を利用したあらゆる租税回避行為を予め想定して網羅的に定めたものとは言いがたい。よって、5年以上支配が続いていたとしても、法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合がある。
A 本件の合併では、合併と共に新子会社を設立し、旧子会社の事業はほぼそのままの姿で新子会社に引き継がれている。そうすると、会社は旧子会社の持っていた青色欠損金だけを引き継いだに等しい。これでは、組織再編税制が通常想定しているような事業の移転及び継続という実質が伴っているとはいえず、実態とは乖離した形式を作出する不自然な取引である。

実務ではよく、57条3項に登場する5年ルールで欠損金の引き継ぎ可否を考えがちですが、このルールを形式的に適用しようとすると、大変危険であり、やはり実態の伴う組織再編にする必要があるでしょう。

中小企業でよく使われる税制といえば、
1.中小企業投資促進税制(租税特別措置法42条の6)
2.商業・サービス業活性化税制(租税特別措置法42条の12の3)
3.中小企業経営強化税制(租税特別措置法42条の12の4)
4.所得拡大促進税制(租税特別措置法42条の12の5第2項)
といった特別償却、特別控除があります。
しかし、「自分の会社は中小企業だ」と思っていても、思わぬ原因でこれらの税制を利用できない場合が出てきます。
そのような場合として、今日は「みなし大企業」という概念をお話しします。自社が下記の「みなし大企業」に該当する場合、残念ながら、上記のような税制は使えないこととなります。
では、早速見ていきましょう。
【みなし大企業の判定について】
上記のような税制を適用にあたり、下記のような大きな会社に支配されている会社は「みなし大企業」として適用可能な会社から除外されています。
(1)発行済株式総数又は出資の2分の1以上が同一の大規模法人の所有に属している法人
(2)発行済株式又は出資の3分の2以上が大規模法人の所有に属している場合
※大規模法人とは、
@資本金若しくは出資金の額が1億円を超える法人
A資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人
B資本金又は出資金5億円以上のである法人の100%子法人
C資本金又は出資金5億円以上の複数の法人に発行済株式のすべてを保有されている法人

非常に複雑な内容ですが、要するに大きい会社に支配下にある中小企業には中小企業としての租税特別措置法の保護を与えないとするものです。

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