中小企業者等については一定以上の賃上げを行った場合には、従来の制度よりもより多くの税額控除を受けられるようになりました。
但し、税額控除を受けるために賃上げを行う企業というのは通常ないでしょうから、このような制度が賃上げのインセンティブとなるかと言われるとはなはだ疑問ではありますが、とりあえず毎年昇給している企業にとっては結果的により多くの税額控除を受けることができるかもしれません。なお、この改正は法人税だけでなく、所得税でも同様の改正が行われます。
(1)もともとの制度の復習
前提条件:青色申告法人(大法人でも適用可能な制度です)
要件1:当事業年度の国内雇用者に対する給与等の支給額(雇用者給与等支給額)が基準年度の国内雇用者に対する給与等の支給額より一定割合以上増加していること。
要件2:当事業年度の雇用者給与等支給額が前事業年度の国内雇用者に対する給与等支給額以上であること。
要件3:当事業年度の平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を超えていること。
以上のすべての要件を満たした場合に、雇用者給与等支給額の10%相当額を法人税額から控除するという制度でした。
(2)改正内容
@中小企業者等の場合
下記の条件を満たした場合には下記の税額を控除します。
要件1及び要件2⇒現行制度と変更なし。
要件3 {(平均給与等支給額)−(比較平均給与等支給額)}/(比較平均給与等支給額)≧2%を満たす
⇒税額控除額
 a:雇用者給与等支給増加額×10%
 b:「雇用者給与等支給増加額」と「雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した残額」のいずれか低い金額×12%
 c:a+b=税額控除額
つまり、新しい要件3を満たした場合には、今までの税額控除に12%を上乗せさせるイメージとなります。
ちなみに、要件1、2は充足しているものの、新しい要件3を満たさない場合には、従来と同様の計算になります。
A中小企業者等以外の場合
要件1、要件2は現行制度と変更ありません。
要件3{(平均給与等支給額)−(比較平均給与等支給額)}/(比較平均給与等支給額)≧2%を満たす
⇒税額控除
 a:雇用者給与等支給額×10%
 b:「雇用者給与等支給額増加額」と「雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した残額」のいずれか低い金額×2%
 c:a+b=税額控除額
中小企業者等以外の法人については、新しい要件3をクリアできなかった場合、所得拡大促進税制の適用自体がなくなりますので注意が必要です。
以上を図式化すると下記のようになります。
所得拡大促進税制改正
(3)適用時期と留意事項
この改正は平成29年4月1日以後開始する事業年度分より適用されます。この税制を適用するために事前の書類提出は不要です。また、業種の制限もないことから、これまで光が当てられてこなかったサービス業でも税額控除を受けるチャンスが与えられていることになります。しかし、この制度を適用するためには特に平均給与等支給額の集計に時間を要することから、申告期限間際に計算すると誤りの原因になります。また、会計事務所によってはこの制度を適用しないところもあるという話も聞かれます。
もし、毎年昇給をさせているのに、御社の顧問税理士から所得拡大促進税制の話をされたことがないという企業様がおられましたら、当会計事務所までお問い合わせください。