こんにちは。思考と習慣のサクセスパートナー、キャッシュフローコーチの檜垣孝司です。
今日は全体最適と部分最適について考えてみたいと思います。
社員数がそこそこ多くなってくるとよく出てくる問題がこの全体最適化と部分最適化の問題です。
「全体最適」とか「部分最適」とかっていうと、ちょっとわかりにくいので、例を挙げてみましょうか。
例えば、
●社長としてはもっと社員に主体的に動いてほしいのだけれども、社員はできるだけ仕事をせずに楽をしようとする。
●会社としてはとても給料を増やすことができる局面ではないにもかかわらず、従業員からは強い賃上げプレッシャーがある。
●新しいシステムを導入したものの、その機能を一部しか使っていない。
●経営改革のために行っている社長向け成果発表会の取り組みが形骸化し、無難な発表をすること自体が目的化している。

こういうケース、よく見かけますよね。つまり、全社的な見地からすれば、「こうすべきだ!」という方向性と、例えば各従業員の見地や特定の部署の見地から見た場合に「こうした方が楽!」という方向性との衝突、これが「全体最適と部分最適の問題」です。さらに言い換えるならば、全社的にいいはずのことが、各部署単位でみればまずいことだったり、各部署単位でいいことが、全社的にはまずかったりするような現象です。

この「全体最適と部分最適の問題」ですが、上の例に挙げたものも含めて、ある共通した原因があります。それは、「経営者と従業員との間の情報量のギャップ」です。
では、どのような情報量のギャップなのか、それは、「それを実施する意味に関する情報量」のギャップです。例えば、今賃上げを先送りすることで、全社的にどのようなメリットがあり、それが将来の社員の生活にどうプラスの影響を与えるのか、きちっと言語化しているでしょうか。あるいは、新しいシステムを導入した場合でも、そのシステムを導入して何を改善し、最終的にそれが社員にとってどういう意味をもたらすのか、常時・明確に伝えているでしょうか。さらに経営改革の一環で行われる社長向けの成果発表会も、よくある形骸化の原因は何か変化させること自体が目的となってしまい、どのように変化し、その結果、全社的にどういうビジョンを描いているのかが明確に言語化できていない場合に起こりやすくなります。他にもこの当社のHPにしても、「更新すること」自体が目的化すると、内容が薄っぺらになったり、分量減ったり、テーマに一貫性がなくなったりし、一体何を言いたいのかが分からなくなってしまいます。その場合には、そもそも何のためにHPを更新し、その結果として何を成果として想定しているのか、明確に言葉にしておく必要があります。安易に更新頻度を維持することを目的にして、各所員で当番制でHP更新をローテーションさせると容易に想像できるのは、「とにかく何かを書こう」というスタンスで、個々バラバラの内容で更新してしまったりすることです。

そうだとすれば、このような部分最適を回避し、全体最適に向かわせるためのポイントは、「やり方とやる意義は二つで一つ」であることを理解することです。賃金据え置き、新システム導入、社長向け成果発表会、社員の主体的な行動、これらはすべて「手段」であり「やり方」に属します。大切なのは、そっちではなく、「なぜそれをやるのか」、「その先にどんなメリットがあるのか」という「意義付け」を明確にすることです。

これを可能にするためには、何らかの施策を実施する前に、そもそも自分自身がその意義の部分をしっかり言語化しておく必要があります。ところが、多くの人が「言語化ぐらい当然できている」と考え、自分の考えを紙に書きだして整理してみたり、誰かに聞いてもらって不明確な点がないかをコーチしてもらったりすることはありません。明確に言語化できない概念は雲のようにだいたいのまとまりをもちつつも、徐々に形が変わっていきます。当然誰かに伝えるにあたっても、核心部分を明確に言い表すことができなくなり、相手に自分の考えが浸透しません
週に1回なのか月に1回なのかはともかく、時々は、こういう自分の考えをしっかりと言語化する時間を持つということです。そうすることで、自分自身でも自分の目指したいものが明確になるだけでなく、それを他の人にも明確に説明することができ、お互いの目標の目線を合わせることにつながります。それが最終的に、部分最適状態から全体最適へとシフトしていくカギとなり、皆さんの目指す成果へつながっていくのではないでしょうか。