特別支配株主の株式等売渡請求権
会社法の一部を改正する法律案(平成26年6月20日 可決成立)

1.はじめに
平成26年6月20日、会社法の一部を改正する法律案が参議院本会議にて可決・成立いたしました(施行日については未定)。
そこで、今回は、上記の改正された内容の中から、「特定支配株主の株式等売渡請求権」についてご紹介いたします。

この制度は、9割以上の議決権を保有している大株主が一方的に請求することにより、残る1割の少数派株主の保有する株式を取得することができる制度です。

2.具体的な手続きについて
実際に株式を取得するための手続きとしては概ね下記のような手続きが必要となります。

 @株式売渡請求内容の決定
 A対象会社による承認
 B売渡請求される株主に対する通知
 C売渡請求に関する書面等の事前開示
 D売渡株式の取得
 E売渡請求に関する書面等の事後開示

@株式売渡請求内容の決定
株式売渡請求を行う場合、売渡請求を行う者はまず、下記事項を定めます。
ア.株式買取の対価として交付する金銭の額又はその算定方法
イ.売主に対する上記金銭の割り当てに関する事項
ウ.株式売渡請求を行う者が、その株式を取得する日

A対象会社による承認
株式の売渡請求をする者は、「@株式売渡請求内容の決定」で定めた内容等を、当該株式の発行会社に通知し、その承認を受けなければなりません。
 
その会社が取締役会のある会社であれば、取締役会決議により承認するか否かを決定し、決議結果の内容を株式売渡請求をする者に通知します。

B売渡請求される株主に対する通知
対象会社は、「A対象会社による承認」で承認する場合には、取得日の20日前までに、売渡請求をされる株主に対し、下記の事項等を通知しなければなりません。

・当該売渡請求を承認した旨
・売渡請求をしている者の氏名、名称及び住所
・売渡に対する対価に関する事項    他

C売渡請求に関する書面等の事前開示
対象会社は、「B売渡請求される株主に対する通知」により通知の日から取得日の後6か月間、下記の内容を記載した書類を備えおき、売渡す株主が閲覧できるようにする必要があります。

・売渡請求をした者の氏名、名称及び住所
・取得の対価に関する事項
・取得日に関する事項

D売渡株式の取得
株式の売渡請求を行った株主は、取得日に当該売渡請求に係る売渡株式の全部を取得します。
この際、株式に譲渡制限を設定している会社の場合には、譲渡承認があったものとみなされます。

E売渡請求に関する書面等の事後開示
対象会社は、取得日後6か月間、売渡請求により取得された株式の数その他の内容をを記載した書面を作成し、売渡した元株主が閲覧できるようにする必要があります。

3.最後に
今回の会社法改正では、既に9割以上の株を持っている人が残りの1割を強制的に取得できてしまう制度が制定されました。
これにより、個々の少数株主との交渉を経ることなく、スピーディーに完全支配を獲得できます。
また、株式には1株でも持っていれば、株主代表訴訟を起こすことができるという恐ろしい面があります。
そのため、意見の合わない少数派株主等を少数派だからといって、そのままにしておくのは危険です。自ら資金調達を行う必要はありますが、事業承継・組織再編などの節目にあたり、この制度で株主構成を整えることを考えていただければと思います。

なお、以上の説明は皆様にご理解いただきやすいように詳細な部分を省略して平易に記述しております。詳しくは当会計事務所までお問い合わせください。